いまそこにある小説は、わたしたち人間の限界を描く。
2021/08/07
ミランクンデラは「人間の限界とは言葉の限界であり17P
それは文学の限界そのものだ」と言った。
新しい小説は、その限界の向こうにいる
人間を描くだろう。
小説を書く、ということはその向こうに行きたいという
人間の願いの中にその根拠を持っている。
人間というこの宇宙に偶然生れた、不思議なけれども
取るに足らない存在にとりついている本能、その中でも
もしかしたらその点によってだけ、他の存在と区別されて
いるかもしれない本能「ここではないどこかへ行きたい」
「目の前にあるその壁の向こうに行きたい」という本能が
小説を(文学)産んだと思われる。
人間の存在とともに古いものである。
そして性質上、絶対に古びることのないものだから。
「小説教室」高橋源一郎著岩波新書引用