語感を決めている「発音体感」が言葉の印象を左右している。

      2021/07/05

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言葉の感性である語感を客観視することは重要である。
感性と感情は大きく違う。

感情は喜怒哀楽であり、感性は脳の気分である。
丸い怒りであれば赤ん坊であっても、自分で処理して感性育成の糧にしてくれる。

「脳の気分」は脳神経の生理状態により生れてくるもので、「気の持ちよう」
でどうにかなるものではない。

発音体感は大脳ではなく小脳が受けとる。
小脳は無意識の領域なので大脳系よりも早く深く意識に届く。

ということは耳で聞いた音響イメージや言葉の意味よりも口が開いた
開放感があるとか、破裂音を発したときにその感覚のほうがずっと先に脳に届いている。

日本語は言語としての完成度が高いといえる。
人生の最初の三年間、人は母語と出会い、ことばと意識と所作と風景と人々の反応を結びつける。  42P

母語は、母親(主たる保育者)との密接なコミュニケーションによって形成されて
いくもので、息遣いを感じながら、脳に根づいていくものだ。

言語教育のビデオを見せ続けても、赤ちゃんの母語は形成されない。
母語が形成されないと、外界を上手に認知できず、他者とコミュニケーションもとれない。

つまり言葉がわからないだけでなく、甘えて抱きついたり、元気のない母親の手をそっと握ったり
微笑みかけたら微笑み返すなどの、ふつうの幼児がしてくれる人間らしい反応もしてくれないのである。

三歳までの母語形成期に何より大切なのは、母親が幸福であること、すなわち満ち足りて、やわらかな  45P
意識でいることである。

私たち人間には、目の前の動作に共鳴する能力が生れつき備わっている。
このため相手が発音したことばでも、まるで自分が発音したかのように感じるのである。

この生来の能力によって、赤ちゃんは、お母さんの発音体感に共鳴し、発音を覚えていくのである。
体感を共有しているので、お母さんが「ア」と発音したときに、お母さん自身が感じている

あっけらかんとした開放感や始まりの意識を、赤ちゃんは、ともに感じている。
「朝よおはよう」とお母さんが赤ちゃんを抱きあげると、お母さんの弾む気持ちも赤ちゃんにインプットされる。

妊婦が心から嬉しくて、心をこめて「ありがとう」と言ったとき、「ありがとう」の音声の母胎振動と  66P
母胎の満ち足りた気持ちのときのバイタルサイン(生きていることを示す指標)、まだ親指ほどの胎児でも

この組合せを知ることになる。
嬉しい「ありがとう」に多く出会えた妊婦の子は、長じて「ありがとう」に特別の喜びを感じる人になる。

「日本語はなぜ美しいのか」黒川伊保子著集英社新書引用

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