月は秋、花は春、雨はむつかしいが「恋の語」といえる。
2021/06/27
雨は恋の語と言ったのは、池田弥三郎先生。 1P
田植えは梅雨時で、人々は夫婦の交わりも恋人との逢瀬も謹んだ。
それにより雨の歌を詠むときは、せつない恋の歌を詠んだという
のである。
昔の人は雨に色を見てきた。
「白雨」は夕立のことで、緑雨、青雨、翠雨は新緑のころ降る雨。
「利休鼠」の雨は、北原白秋が作詞した「城ヶ島の雨」の中の詩だ。 14P
緑がかかった灰色に鼠色が増したものである。
昔の川柳には雨を読んだものが多くのこされている。
「雨の字をあめさめだれとぐれて読み」
「さめ」は春雨、「だれ」は五月雨、「ぐれ」は「時雨」のことである。 30P
ぐれるは横道にそれることを言う(ぐれちゃうぞである)。
「釣り鐘をさしで担ぐと雨になり」
能の「道成寺」を上演すると奇妙に雨が降る、と言われることを歌った。
日本語には雨という字がつかないで雨を指す言葉がある。 36P
「御降り(あさがり)、富正月」これは元旦に降る雨をいう。
「山めぐり、入液、出液」これは時雨のことである。
「御山洗、富士の山洗い」富士山閉山のころ降る雨。
「夏ぐれ」沖縄で夕立を指す言葉。
「薬降る、神水」陰暦五月五日を薬日といい、五日の正午に降る雨。
「雨降山」とは相模の国の大山のことである。(標高1245メートル) 53P
南関東と相模湾を俯瞰する霊山として奈良時代以前から信仰を集めた。
わけても漁師たちからは、晴雨を判断したり羅針盤の代用とされ
近在の村々からは、雨乞いに霊験あらたかなものがあった。
雨のつく地名は多くある。 75P
雨晴(富山県高岡市)雨間(東京都秋川市)雨粉(旭川市)雨竜町(空知)
「雨の楽しい話」原田稔著日本図書刊行会引用