官能とは感覚器官の働きをいうが、普通「官能を擽る」と使う。

      2021/06/26

美女9

2藤井萩花

「さるところに久しく売家の札斜に張りたる待合。固より横丁なれども  167P
其後往来の片側取ひろげになりて、表通の見ゆるやうになりしかば

待合家業当節の御規則にて、代がかわれば二度御許可になるまじとの
噂に、普請は申分なき家なれど、買手なかなかつかざりしを、ここに

金阜山人といふ馬鹿の親玉、通りがかりに何心もなく内をのぞき、家づくり
小庭の様子人目見るなり無暗とほれ込み、早速買取りここかしこ手を入れる

折から、母家から濡縁つたひの四畳半、その襖の下張何やら一面にこまかく
書つづる文反古、いかなる写本のきれはしならんと、かかることには

目さとき山人、経師屋が水刷毛奪ひ取って一枚一枚剝がしながら読みゆくに
これやそも誰が筆のたはむれぞや。はじめの方はちぎれてなし」
永井荷風「四畳半襖の下張」                      165P   

「妊娠十箇月と見紛がうほど、あたかも妊婦腹思わすように、水責めを  249P
受けてぱんぱんに膨らみはちきれんばかりに突っ張った太鼓腹。

腹の上を玉のような汗が流れ、へそ穴に落ちて水たまりをつくる。
一瞬、キラリと陽に輝いたかと思うと臍からあふれ出た玉汗が

枝葉わかれに二条の川となって下腹を伝いおりてゆく」
普光江泰興「すこぶる変態」                222P

「エロティックス」杉本彩編集新潮文庫引用

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