立川昭二さん早大文学部史学科卒、北里大学教授1966~97年。

      2020/07/11

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「日本人の死生観」という著書は出来栄えがたいへん良い。
日本で「臓器移植法」が成立したのは1997年である。

低成長期に入り、高齢化社会に突入した今日、生の欲望の
無限追求にひたすら走ってきた高度成長期には忘れていた

老いや死の問題に、だれしも否応なく向き合わざるを得なく
なったからといえよう。

欧米の思想や宗教にその解決を求めるよりも、私たち自身の
先人たちがいかに生き、いかに死んでいったかという歴史に

学びたいという欲求が「日本人の死生観」というテーマに
集約されていったと思われる。

立川昭二さんが自ら「死」をめぐるアンケートを行った。
男性178人(60代76名70代71名)、女性407人(20代74名

30代62名40代65名50代71名60代85名)平均年齢男性57歳
女性46歳である。

「死後の世界(あの世)」はあるか?
有ると無いは同数の168人(29.5%)。

死者の霊を信じますか?
信じる317名(54%)信じない78名(13.4%)

信仰していますか?
している190名(33.8%)していない315名(56%)

遺書(遺言)を書きましたか?
書いた38名(6.7%)書かない345名(60.5%)

国連などの調査では、日本は世界でももっとも宗教に
関心を持たない国民であるという結果が出ている。

死生観を考えるうえで重要な項目に死後観がある。
死後の世界を信じるのは年配者には少なく、むしろ

若い人に多いのである。
「願わくは花のしたにて春死なむそのきさらぎの望月のころ」

800年前に西行がつくった和歌である。
辞世の歌ではなく、死ぬおよそ十年前に作られた。

「何事のおわしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」
この歌は日本人の宗教観あるいは、神仏観をもっともよく表した

歌といえる。
西行と同時代の源実朝も

「神といひ仏といふも世の中の人のこころのほかのものかは」
かはと詠んでいる。

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