ジャン・アンリ・ファーブルは1823年フランス生れ。

      2020/05/14

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ファーブルはたまたま読んだ本の中で「化学」という言葉に
出会った時、それはなぜか魔法のようなもの、もしくは

あらゆる物質を金と化したり不老不死の妙薬を製したりする
錬金術の「偉大なる魔法」のようなものだ。

と思い込んだことを、名著「ファーブル昆虫記」の中で述懐
している。

今日の化学は経験主義的な色合いを次第に薄めていく傾向に
あるが、福井謙一さんが化学に出会った頃は、化学すなわち

経験的な学問、という印象がはなはだ強かったのである。
福井さんが京都大学工業化学科へ入学したのは1938年のことで

今世紀の化学に最も大きな影響を与えた量子力学の誕生から
わずか12、3年しか経っていない頃であった。

化学は複雑な性格を持つ。
物理学と比較すると明確である。

電子は、原子や分子(原子が化学結合してできる粒子)の中に
あって、原子核の周りにさながら雲のように広がっている存在

であるが、それぞれの電子は、動きも速さもさまざまで、複雑
なその様相がきわめて補足しにくいのである。

ところが物理学においては、電子個々の違いはほとんど思考の
対象にならない。

かなりスピードの速い電子でも、どんなに動きを束縛された
電子でも「電子」という概念で画一的に扱われる。

化学の進歩は、1920年代に物理学者たちによって創られた
原子・分子といったミクロ的世界を支配する普遍的な原理

量子力学の展開と、複雑な計算をあっという間にやってのける
コンピューターや物理測定器機などの性能の驚くべき向上に

与るところが大きいと考えられる。
1964年に発表したフロンティア軌道の対象性に関する論文の

「フロンティア軌道理論」と命名された福井謙一さんの理論
も、そのうちの一つに加えられている。

この理論は1981年のノーベル化学賞の「受賞通知」にも記さ
れている。

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