中原中也詩集「汚れっちまった悲しみに」

      2019/07/07

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「少年時」
「あをぐろい石に夏の日が照りつけ、庭の地面が、朱色に睡ってゐた
地平の果に蒸気が立って、世の亡ぶ、兆しのやうだった

私は希望を唇に噛みつぶして 私はギロギロする目で諦めてゐた
あゝ、生きてゐた、私は生きてゐた」

「汚れっちまった悲しみに…」
「汚れっちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる
汚れっちまった悲しみに 今日も風さえ吹きすぎる

汚れっちまった悲しみに いたいたしくも怖気づき
汚れっちまった悲しみに なすところもなく日は暮れる…」

「頑是ない歌」
「思えば遠くに来たもんだ 十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた 汽笛の湯気は今いづこ」

「酒場にて」
「今晩あゝして元気に語り合ってゐる人々も
実は元気ではないのです。

近代(いま)といふ今はすくなくとも
あんな具合な元気さで ゐられる時代(とき)ではないのです」

「この小児」
「コボルト空に往交えば 野に 蒼白の この小児
黒雲空にすぢ引けば、この小児 搾る涙は 銀の液…」

 - 読書