人生百年になって、死ぬことを忘れてしまった。
2019/06/05
人生は若きも暮れる日も、それなりに良い。
多くを持たず、風に吹かれて生きれば、過去は幸せになる。
亡くなってしまえば、人間は生物として「無」となり
なにもなくなり、考えることもなくなる。
老人をうまく成熟させる方法は難儀なことなのです。
思考力、洞察力は成熟していくけれども、記憶力や
気力体力は落ちていく。
老いの素晴らしさを発見する旅を続けることが秘訣だ。
「雪の賦」中原中也
「雪が降るとこのわたくしには、人生が
かなしくもうつくしいものに
憂愁にみちたものに思へるのであった。
その雪は、中世の、暗いお城の塀にも降り十分悲しくあったのだ」
「沙羅のみづ枝に花さけば、かなしき人の目ぞ見ゆる」
芥川龍之介「相聞」
この歌は龍之介の恋心です。
切なく思う人の瞳が浮かんでくるのです。
沙羅双樹の別の名前は「夏つばき」で、六月から七月に
白い可憐な花を咲かせます。
人生に悩みも苦しみも無かったたら、おそらく芸術、文学
音楽のたぐいは生まれてこなかったのでしょう。
人はみな、不幸な思いをしたことがあり、その都度自分を
勇気づけ、生きていこうとふるいたたせて来ました。
「生れたことをあきらめ、死ぬことをあきらめる」
曹洞宗「修証義」の冒頭にあります。
「ああ智慧は かかる静かな冬の日に
それはふと思ひがけない時にくる」
三好達治「冬の日」