太宰治の「女生徒」の少女の魅力と「雪国」の駒子の美しさ。

      2019/03/17

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島村の旅館部屋で駒子が弾く、勧進帳の三味線の響き。
この場面は駒子の独擅場である。

「あさ、眼をさますときの気持ちは、面白い。」
ろ始まるのが太宰の「女生徒」。

この小説の文章は十文字以下で読点が入り十行以上
文章が続くことがある。

「パチッと眼がさめるなんて、あれは嘘だ。濁って濁って
そのうちに、だんだん澱粉が下に沈み、少しずつ上澄みが出来て

やっと疲れて眼がさめる。朝は、なんだか、しらじらしい。
悲しいことが、たくさんたくさん胸に浮んで、やりきれない。

・・朝の寝床の中で、私はいつも厭世的だ。いやになる。いろいろ醜い
後悔ばっかり、いちどに、どっとかたまって胸をふさぎ身悶えしちゃう。」

朝は意地悪。
「お父さん。」と小さい声で呼んでみる。

読点が大変多い文章なのに句点にたどり着くまでがとても
長いので、読んでいて異次元の世界に入ったようだ。

「自分の顔の中で一番眼鏡が厭なのだけれど、他の人には
わからない眼鏡のよさも、ある。眼鏡をとって、遠くを

見るのが好きだ。全体がかすんで、夢のように、覗き絵
みたいに、すばらしい。」

「きのう縫い上げた新しい下着を着る。胸のところに、小さい
白い薔薇の花を刺繍して置いた。上着を着ちゃうと、この

刺繍見えなくなる。誰にもわからない。得意である。
お母さん、誰かの縁談のために大童、朝早くからお出掛け」

「眠りに落ちるときの気持ちって、へんなものだ。鮒か
うなぎか、ぐいぐい釣糸をひっぱるように、なんだか重い

・・私がとろとろ眠りかけると、また、ちょっと糸を
ゆるめる。すると、私は、はっと気を取り直す。」

1939年2月24日に執筆完了した。
文學界4月号に発表。

女性一人称の小説である。
独白的な書き方になっている。

どう見ても太宰の心の中には女性が存在する。
上着を着ると下着の刺繍が見えなくなることを得意にしている。

男の感覚ではありません。

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