「シーザー」と「初代トルコ大統領ムスタファ・ケマル」
2017/02/23
塩野七生に「ローマ人の物語」という本がある。
1992年に第1冊が出版され2006年に15冊で完結。
1~5巻は王政ローマ成立から共和制移行の興隆期を迎えます。
6~9巻は帝政全盛期で11~15巻は衰亡から滅亡へ。
歴史書というよりも各時代の主要人物に焦点をあてている。
共和制が始まったのはBC6世紀頃です。
多神教のローマは寛容な国家であったが、キリスト教を国教
(AC313年)にしたときから一神教によるもろさを見せ滅亡した。
15巻という長きにわたる、この本を考えると歴史というものは
戦いがあるからストーリーが深くなるのであって、内政や外交
ばかりの歴史書は読んでいて面白くない。
ローマの話でいえば共和制開始からカルタゴの名将ハンニバルの
(名映画?「羊たちの沈黙」にこの名が登場する。)
象をつれたアルプス越えが起きた「ポエニ戦争(BC3世紀)」
ころまでが山場だと思います。
日本でいえば戦いがゼロである江戸時代は幕末まで話らしい物はない。
中国の歴史「十八史略」は唐帝国以前は面白い人物や話があるが唐が
官僚国家を始めたところから、読んでも全く楽しめません。
中国の歴史でいえば「史記」における春秋戦国時代が白眉なのです。
そしてオリエントもシュメールからアケメネス朝が良い。
ローマの1000年の歴史を15冊かけて書いた書籍は冗長にならざるを
えません。
塩野七生は歴史的政治家のランキングを書いた本の中で
「ジュリアス・シーザー」を総合力で飛びぬけているとしました。
これは思うに塩野七生の歴史的ヒーロー好きが言わせているのでは
ないだろうか、彼以上の人物はたくさんいます。
なおかつローマの歴史を15年かけて書物にすると、なぜ「日本人へ」
とか「男たちよ」などの、おせっかい本を書きたくなるのでしょう。
塩野七生が司馬遼太郎に似たところです。
塩野七生の狂気は織田信長の宗教戦闘集団弾圧を評価したことである。
信長が1500年代に宗教界と闘ったことで、日本人は宗教紛争を
まぬがれたとしている。
問題は闘った結果何が起きたかです。
明智光秀に暗殺されたにすぎません。
政教分離を成しとげた人をあげるなら、トルコ共和国の英雄
「ムスタファ・ケマル・アタチュルク(大統領任期1923年10月~38年11月)」
という人物を書いてほしいものである。
第一次世界大戦後の混乱したトルコにおいて、独立と革命を成しとげた人です。
ムスタファ・ケマルはあれほどイスラム色の強いトルコにおいて1924年
議会にカリフ制の廃止を決議させ(革命的である)脱イスラム国家化を
一気にすすめた。
同年宗教学校を閉鎖、1925年には神秘主義教団の道場を閉鎖して宗教勢力を
一掃しました。
1928年憲法からイスラムの国教と定める条文を削除、アラビア文字を廃止
してラテン文字を使うことにしました。
彼は1938年11月10日大統領在任中に激務が原因の肝硬変で亡くなりました。
「アタチュルク」とは〈父なるトルコ人〉という意味です。